【NY1メルマガ】FRBは低インフレを分析し、金融政策を調整した(2019.12.14)

FRBは低インフレを分析し、金融政策を調整した(2019.12.14)
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こんにちは。児島です。 英国の保守党の圧勝で、 英ポンドは、派手な値動きでしたね。 さて、今号は、12月11日の FOMC会合後のFRBの発表についてです。 政策金利は、据え置きで、 新味がないという意見もありますが、 今回FRBは、非常に大きなメッセージで、 金融政策の調整を、明確にしました。 きょうのメルマガです。

■低インフレを分析、謙虚さ、自信のパウエル議長会見 

今回、12月10日・11日に開かれた、 FOMC会合で、FRBは、 現行の政策金利の誘導目標、 1.50%(下限金利)〜1.75%(上限金利)の 据え置きを決めました。 これまで、低インフレの解釈をめぐって、 やや混乱気味だったFRBですが、 今回のパウエル議長の会見は、 低インフレの理由を明確に分析し、 謙虚さと、自信を、 感じさせるものとなりました。 

 これまでの流れを、振り返りますと、 FRBは、今回の中期サイクルは、 2015年12月に、9年半ぶりに、 0.25%の利上げを行って、 ゼロ金利政策を解除。 0%(下限金利)〜0.25%(上限金利)が、 0.25%(下限金利)〜0.50%(上限金利)と なりました。 

FRBは、その後も、 徐々に利上げを進め、 特に、 2018年は、1月の時点で、 1.25%(下限金利)〜1.50%(上限金利) だった、政策金利の誘導目標が、 3月・6月・9月・12月と、 0.25%の利上げを、 4回行って、 2.25%(下限金利)〜2.50%(上限金利)の 水準まで、金利を引き上げました。 

 この過程で、トランプ大統領と、FRBが衝突。 トランプ大統領は、 金利の引き上げペースが早すぎて、 景気や雇用の回復を妨げると、猛反発。 パウエル議長を、強く批判する事態に。 
一方、FRBは、インフレ率が、 上がってこないことを、問題視。 見かけほど、景気や雇用が 過熱する状況ではないとの判断から、 2019年7月・9月・10月と、 景気減速を防ぐために、 0.25%ずつの利下げを行いました。 

今回、12月の会見で、パウエル議長は、 雇用は強いが、賃金はそれほど上がらす、 過熱した状況ではないと、説明しています。 つまり、賃金の上昇が、 すぐに進む状況ではなく、 インフレの懸念は、小さいという判断です。 ですから、 インフレ防止のための利上げは、 その状況を見てからでも、十分であり、 遅くはない、という考えです。 

■なぜ、インフレ率は上がりにくいのか? 

 これまで、メルマガで書いていますが、 なぜ、インフレ率は、上がりにくく、 アメリカで、雇用は改善しても、 賃金の上昇は、遅いのか? これは、大恐慌であった、 リーマンショックで、失われた雇用が、 膨大な量であったためです。 

 例えば、こんな話をしましょう。 10人のうち、5人が職を失ったあと、 雇用が改善して、 1人2人と、職に復帰して、 7人まで、雇用が回復した状態になりました。 7人には職があり、まだ3人には、ありません。 
一方、別のケースで、 10人のうち、8人に職があり、 2人に職がない状態から、 1人2人と雇用が改善すると、 10人全員に、職があるようになります。 

この2つの例では、 雇用改善のペースは、 どちらも同じですが、 それまでの状況によって、 労働需給の状況は、大きく異なります。 最初の例では、まだ労働需給は弱く、 3人が、職を求めている状況で、 そう簡単には、賃金は上がりません。 しかし、その次の例では、 10人全員に職があり、 賃金は、上がりやすくなります。 大恐慌のあと、というのは、 最初の例となるわけです。 

このように、雇用が改善し、強くても、 インフレ率の上昇や、 賃金上昇が起きるには、 一定期間、景気の上昇が続いて、 かなりの、雇用の「席」が、 埋まる必要がある、ということです。 ですから、 リーマンショックのような、 大恐慌の後は、 インフレ率は、上がりにくく、 インフレの心配をするよりも、 雇用拡大の心配をする必要がある、 ということです。 

■超長期サイクルでみると・・ 

これを、70年周期の 超長期サイクルで見ますと、 上昇期は、 2010年から2050年です。 まだ、上昇期前半の20年間、 2010年から2030年ごろまでは、 雇用が、全員に行き渡るのに時間が必要で、 インフレ率は、上がりにくい状態です。 インフレの心配をするのは、 2030年ごろからの 20年間になる、 ということです。 雇用の拡大は、 実社会では、かなり時間がかかる、 ということです。 

実際、戦後を振り返ってみましても、 前の超長期サイクルの底の、1940年から、 1980年までの上昇期のうち、 インフレ傾向が強かったのは、 上昇期後半の20年間、 1960年から1980年です。 このように、 株式市場など、金融面では、 景気への反応は、早いですが、 実際の、一般国民の仕事では、 職が増えて、収入が増えるには、 10年単位以上の、 長い時間が、かかるということです。 

今回のパウエル議長の会見の話では、 こうした、低いインフレ率の分析が、 FRB内で、十分行われたことが、 感じられます。 パウエル議長の説明でも、 インフレ率が上がる心配は、 少ないという話があり、 FRBが、低いインフレ率の「謎解き」を、 十分行って、 金融政策の調整に成功した、 といえるでしょう。 そのことが、パウエル議長の 今回の会見に、 謙虚さと自信を、感じさせるものと なっています。

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