NY1メルマガ2018.9.12「なぜ?短期金利を下げない日銀」

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なぜ?短期金利を下げない日銀
2018.9.12
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■プラス0.1%が大半で、何が起きる?


さて、こうして、金融機関の、
日銀当座預金への「預金」に、
プラス0.1%がつくと、
何が起きるのでしょう?


最近の、市場の短期金利は、
次のようなレートです。
(金融機関などの資金のやりとり)


金融機関が、担保なしで、翌日に返す、
無担保コール翌日物の金利水準は、
マイナス0.057%付近です。
(2018年9月11日、平均レート)


つまり、市場の金利は低く、
日銀当座預金の金利は、高いのです。


これで、勘の良い方は、気づくでしょう。


金融機関は、市場金利より、高めの、
日銀に「預ける」と、
金利が高くて、有利なのです。


ほとんど、ノーリスクですから、
日銀当座預金残高は、増え続け、
金融機関は、日銀の、高い金利に、
殺到している、ということです。


業界用語で、
ほぼ、ノーリスクの
「日銀ブタ積み」マネー。


これは、従来のままで、
変わりないのです。



日銀当座預金残高は、
2006年や2007年ごろには、
10兆円前後で推移していました。

これが、2010年には、20兆円を超え、
2013年には、100兆円を超えます。

さらに、2015年には、250兆円を突破。

2017年は、300兆円超え、
2018年9月11日時点では、
385兆円です。


これは、良いことのように思われていますが、
その分、直接的には、
金融機関のマネーが、日銀に集まっている、
ということです。


ということは、世の中、一般社会で、
出回っているべきマネーが、
日銀に吸い上げられているわけで、

この現象は、デフレ基調の中で、
企業の内部留保が積み上がると、
カネまわりが、阻害されることに、
似ています。



これは、ECB欧州中央銀行がしていることと、
全く、逆ですね。


つまり、世間にお金が回るようにしているのが、
ECB欧州中央銀行。


金融機関は、中央銀行に、カネを寝かすなよ、
それより、世の中の、融資に回せ、
中央銀行に、カネを寝かせると、
マイナス金利にするぞ!というのが、ECB。


景気は、回復傾向で、
インフレ率が上昇し始めました。


逆に、日銀は、金融機関から、カネを集めていて、
高い金利を渡し、
融資よりも、日銀にカネをまわせ、というかのように、
直接的には、世間から、カネを吸い上げているのです。


つまり、中央銀行に、カネを寝かせれば、寝かせるほど、
ほぼノーリスクで利益が得られる、
世の中に、カネは、ますます、出回らなくなり、
デフレ基調となる、こういうことです。




■「マネタリーベース」にも注意!


マネタリーベースの拡大が、
よくニュースで出てきますね。


しかし、この話にも、注意が必要です。


マネタリーベース=流通現金+日銀当座預金
ということですから、

もしも、今のように、
日銀当座預金残高が増えずに、
(あるいは、減って)
流通現金が増えれば、
カネまわりが良くなる効果は、大きいです。


しかし、日銀当座預金残高が大幅に増えれば、
マネタリーベースが、拡大していても、
流通現金は、それほど増えていない場合もある、
ということです。


つまり、マネタリーベースの話も、
企業の内部留保の話に、やや、
似ています。


内部留保が増えれば、
カネまわりが良くなるか?

良くなっていないですね。


同様に、マネタリーベースが拡大しても、
日銀当座預金残高が、増えるばかりだと、
世の中で、お金が回っているとは、
言えない、ということです。


やはり、国民の実感が、
正しいということです。



こうして、日銀は、ECBのように、
世の中にお金が出回るようにするよりも、
市場金利より高めの金利にして、
金融機関から、カネを集めている、
ということです。


これは、実際のところ、
金融緩和ではないですね。



日銀の「教えて!日銀」に、
こんな記載があります。
※「政策金利残高」というのは、
マイナス金利の適用分ですね。



「教えて!日銀」より

もし、「政策金利残高」が全体として増加すれば、
その分、マイナス金利で運用し得る余剰資金が増加し、
短期金融市場の金利に、低下圧力がかかります。

逆に、「政策金利残高」が全体として減少すれば、
その分、金利に上昇圧力がかかります。
(以上、「教えて!日銀」より引用)



これは、日銀自身が、説明しているとおりですが、
これを解釈(=読み替え)すれば、

結局のところ、金融緩和ではなくて、
金利は、高めにしている、
このため、結果として、
日本のデフレは持続している、
ということです。


■安倍政権にも、マイナスの作用が


日銀が、本当に金融緩和していれば、
アベノミクスの恩恵は、一般の国民にも、
広く行き渡ったはずです。


不可解な、短期金利の高め設定、
日銀当座預金への、資金吸い上げによって、
デフレは持続しており、

デフレ脱却をめざす安倍政権に、
マイナスの作用を及ぼしているのが、
日銀の金融政策ということです。


よく、マイナス金利にすれば、
一般国民の、預金の金利が付かないではないか、
という話がありますが、
これは、長期金利の話です。


国民が、金利を気にするのは、
普通預金の金利ではなく、
もっと期間が長い、定期預金の金利です。


この長期金利については、日銀は、
不自然な押し下げを行っていますが、
この話は、また後日に。




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【編集後記】
なぜ、日銀は、短期金利を下げないで、
長期金利ばかり、下げるのか?
不可解な金融政策です。

国民は、早くデフレ脱却をしてもらわないと、
困るわけですが。



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